偉そうな兵士が近寄ってきた。その兵士は、普段見慣れない平民服の俺たちに警戒の色を滲ませている。その顔には、職務に対する真剣さが表れていた。
「今日は、どの様な御用でしょうか?」
兵士は、恭しく頭を下げて尋ねた。
「軍の偉い人と会いたいんだけど大丈夫?」
俺は単刀直入に尋ねた。
「少しお待ち下さい」
兵士は慌てたように踵を返し、走って呼びに行ってくれた。その慌てぶりから、俺たちがただの平民ではないことを察したようだった。
「失礼ですわ……まったく。ここで待たせるのかしら……」
ミリアは不満そうに腕を組み、口元を尖らせる。その"青く透き通った瞳"は、兵士の去った方向を睨んでいる。
「すぐに来るんじゃないの?」
俺はミリアをなだめるように言った。
「ですけど……お話をするのですよ? 立ち話をさせるおつもりなのかしら?」
ミリアは王族らしい気品を失わないまま、小声で不平を漏らす。その声には、彼女のプライドがにじみ出ていた。
すぐに軍のお偉方さんがやってきた。その顔には、急な呼び出しへの困惑と、ミリアの姿への戸惑いが浮かんでいる。彼は、額に汗を浮かべ、息を切らしていた。
「ちょっと! 失礼ですわよ! ここで待たせるなんて教育がなっていませんわね」
ミリアは容赦なく言い放った。その声には、皇女としての威厳がにじんでいる。彼女の"青く透き通った瞳"は、お偉いさんを射抜くように見つめていた。
「失礼しました……きちんと教育をさせて頂きますのでお許しください」
お偉いさんは平伏するように頭を下げた。その姿は、まるで土下座でもしているかのようだった。呼びに行ってくれた偉そうな兵士が、お偉いさんに睨まれていた。偉そうなだけで、お偉いさんじゃ無かったのね……兵士は青ざめた顔で立ち尽くしている。その顔には、絶望の色が浮かんでいた。
「では、改めましてお話をお聞きしますので、ご案内を致します……」
お偉いさんは、震える声でそう言った。
「あ、すぐに終わるから、軍で強い人を一人貸してくれる?」
俺は話を切り上げた。
「え? は、はい……承知いたしました。ですが何をされるのですか?」
お偉いさんは、俺の突然の要求に戸惑いを隠せない。その目には、疑問符が浮かんでいた。
「ミリアの護衛かな……それとお金を借りにね」
俺がそう言うと、本当にお金に困り借りに行くと思い、お偉いさんは気不味な表情となり言い難そうに言ってきた。彼の顔には、困惑と、わずかな軽蔑の色が浮かんでいた。
「は、はい? お、お金を借りるのですか? それでは、まず国王様にご相談を……」
それを聞いたミリアが、"ムッとした表情"となりお偉いさんを睨んだ……。俺の説明不足で悪かった! ミリアの"青く透き通った瞳"が、鋭く光を放つ。その視線は、まるで氷のように冷たかった。
「お金が無い訳じゃないよ。金貸しの調査をしに行くんだよ。だから……ミリアのお父さんに見える人が良いかな」
俺が補足すると、お偉いさんの顔から緊張が少し緩んだ。理解ができたようで、安堵の息を吐いたのが分かった。
「はぁ……かしこまりました……」
お偉いさんは、深々と頭を下げた。不機嫌そうに頬を膨らませているミリアの頬を触って、潰して変顔になったミリアを見て俺がニヤニヤと笑いを堪えていると。ミリアの顔は、一瞬にしてコミカルな形に変形した。
「ユウヤ様!?」
ミリアが怪訝な顔で俺を見上げた。その"青く透き通った瞳"には、疑問の色が浮かんでいる。
「頬が膨れてたよ」
「え?」
ミリアは、自分の頬に手を当てて驚いた。
「無意識だったんだ?」
「……は、はい」
ミリアは、少し頬を赤らめ、照れたように答えた。ミリアが触られて嬉しそうな顔になった。怒るところじゃないの? まぁ。機嫌が直って良かった。それにしても、ミリアの仕草というか……表情が可愛すぎだろ。
「膨れて柔らかそうだったから、触って潰してみた」
俺は正直に言った。
「もぉ……恥ずかしいですわ」
ミリアは頬を赤らめ、はにかむように言った。その可愛らしい仕草に、俺はまた少し癒やされた。
♢協力者との打ち合わせと出発遊んでたら、すぐに軍のお偉いさんが兵士を連れてきてくれたが……防具を付けてるしいかにも兵士という格好じゃん……いかつい体格に重厚な鎧は、どう見ても平民には見えない。まるで、これから戦場へ向かうかのような厳めしさだった。
「えっと……防具を外して平民の格好でお願いします」
俺がそう言うと、兵士は戸惑いつつも、即座に返事をした。
「はい!」
その声は、軍人らしく大きく響き渡った。
「それと、喋り方も親が子供に接するように話をして下さい」
「はい!」
話し方も軍人っぽいし……おいおい……大丈夫か? その真面目すぎる返事に、俺は内心で頭を抱えた。この人選で本当に大丈夫だろうかという不安がよぎった。
「それから、ミリアを呼びにくいと思うからミーアって呼んで下さい」
「はい!」
軍人さんは、一切の躊躇なく、大きな声で返事をした。
「緊張して行けなかったんだと思うよ」 俺は、ミリアに説明した。「そうなのですか? いったい……何に緊張しているのでしょうね?」 ミリアは純粋に首を傾げた。彼女の表情は、心底不思議そうだ。青く透き通った瞳には、なぜ娘がそんなに怯え緊張をしているのかという疑問が浮かんでいた。「緊張は、ミリアには分からないと思うけどなぁ……」 俺は、苦笑しながら言った。ミリアは、生まれた時から豪邸や宮殿に住んでいて、父親は最高権力者で、国王よりも権力があって怖い物知らずでしょ。大勢を前にしても平然としてるし……お偉いさんも平民同様の扱いでしょ? それどころか、グラシス国王さえ同様の扱いだったし。彼女の人生には、緊張という感情が入り込む隙がなかったのだろう。「緊張は……この前に初めて知りましたわ……」 ミリアは意外な言葉を口にした。え? ミリアが緊張を覚えたの? スゴイじゃん! ミリアに緊張を与える程の相手がいるの? そんなスゴイ恐い人にでも出会ったのか? 皇帝よりもさらに上の権力者でもいたのか? 俺の頭の中には、たくさんの疑問符が浮かんだ。「え? ホントに? ミリアを緊張させるとかって、そんな凄いヤツがいるんだな?」 俺は、驚きを隠せないで尋ねた。「ええぇ……とても凄いお方ですわ……緊張して震える思いでしたわ……」 ミリアの青く透き通った瞳が、その時のことを思い出しているのか、わずかに揺れる。その声は、感動と畏敬の念に満ちていた。ほぉ……やっぱり人だったのか、スゴイお方……ミリアが敬語を使い震えて褒めるような相手がいるんだな。「へぇ……それは凄いな……俺だったらどうなってたんだろうなぁ……」 俺は、想像力を掻き立てた。ミ
「ユウヤ様……何を……されているのですか?」 ミリアの "青く透き通った瞳" が、少し困惑したように俺を見上げる。その目には、疑問符が浮かんでいた。「ミリアの頬が柔らかくてスベスベで気持ち良いから、触って癒やされてるだけだけど?」 俺は、悪びれる様子もなく答えた。「ううぅ……やめてくださいませ……」 ミリアが頬を赤くして恥ずかしそうな意外な反応をしてきた。ん? ミリアがイチャイチャしてるのを嫌がってる? 嫌がっては無いようだけど……彼女の指先が、俺の腕を軽く叩いた。「え? 何で?」「もう……到着しているのですよね?」 ミリアは、急に焦り出す。その瞳は、屋敷の方向を見つめていた。「うん。15分くらい前にね」「えぇ……それでは屋敷の者が皆、外で待っているのでは?」 ミリアは急に焦り出す。その顔は、真っ青になっていた。 ドアを開けると外でメイドさん達がずらりと並んで待っていたので……ミリアに恥を掛かせる訳にはいかないので、とっさに俺の方が寝てたように眠そうな顔をした。「ふぁぁ~……良く寝た……ミリア待たせちゃったみたいで悪いな~」 俺は、大きなあくびをしてみせた。ミリアが頬を赤くして小声でお礼を言ってきた。「すみません……ありがとうございます。ユウヤ様」「起こさなかった俺も悪いしね……」「その様な事はありません……幸せでした。それに……庇ってもらえるなんて初めてで嬉しいですわっ♡」 ミリアは、 "青く透き通った瞳" を潤ませながら、心から嬉しそうに俺を見つめる。その瞳は、キラキラと輝いていた。そうな
それでも逃げようと機会を伺っていた店主が、出入り口に走ってきた。その目は、まだ諦めていない。コイツには、さらにツライ罰を与えてあげるか……。俺の心に、冷たい決意が宿った。 トゲトゲのウニの様な小さなバリアを膝の関節の間に出現させると、走っていた途中に出現させたので普通に膝を動かしてしまい雷が落ちたような衝撃が、脊髄を駆け上がり強烈な激痛が襲った。そして前に出した足に体重を掛けた瞬間、視界が真っ白に弾け、息すら奪われ気を失う程の激痛が走り、そのまま顔面から転がり激痛で苦しんでいた。顔は土と埃で汚れ、もはや形相と化している。彼の目からは、涙と鼻水が溢れ出ていた。「不法に売られていった子供の苦しみだと思って、そのまま罰を受けててくれ」 俺は冷たい声で言い放った。店主の苦痛に満ちた呻き声が、俺の言葉でさらに大きくなった。「ぎゃぁぁっ!!! クソっ! 何をしやがった!? 痛ぇー!! 許さねぇぞ! クソガキ!! 痛ぇ……クソっ!!」 店主は地面でのたうち回りながら罵声を浴びせる。ウルサイのでもう片方の膝にもバリアを出した。彼の叫び声は、店内に響き渡り、耳障りだった。「はぁ……ウルサイんだけど……黙っててくれる?」 俺がそう告げると、店主の顔がさらに苦痛に歪む。その目には、憎悪と絶望の色が混じっていた。「グゥオー!! 何しやがるんだ! 後で殺してやる! 絶対許さねぇ……」 元気だね……右肘にもバリアを出してみたら痛みで気絶した。店主は全身を痙攣させ、泡を吹いて動かなくなった。その姿は、まるで操り人形の糸が切れたかのようだった。 それを見ていた手下たちが青褪めた顔をし、立ちすくんでいた。彼らの目は、恐怖で大きく見開かれている。その場に張り付いたかのように、身動き一つしなかった。「おい……逃げられると思うか?」 盗賊の一人が震える声で仲間と話す。その声は、絶望に満ちていた。「無理
負傷している兵士に治癒薬を渡して、兵士達に指示を出した。治癒薬は瞬く間に傷を癒やし、兵士たちの顔に驚きと安堵の表情が広がる。彼らの目には、希望の光が宿っていた。「無事な兵士は、負傷してる者を外に運び出して」「はい!」 負傷していない兵士がすぐに動き出す。彼らの動きには、迷いがなかった。「残りの兵士も店から出て逃げる盗賊を捕らえて!」「はい!」 無事な兵士に負傷をしている者を外に引きずり出させ、外には回復をした兵士達が逃げ出してくる者を捕らえる為に店を取り囲んでいた。動きは新兵という訳ではなさそうだった。 店主が、なぜあれだけ堂々と違法なことを堂々と言い、悪びれる様子もなくしていた理由が分かった気がした。この兵士たちを見て確信した。取り締まりの経験がなく店など狭い場所での戦闘経験がない。ということは……この町では、あくどい商売をしても大ごとにならなければ取り締まりをされないってことだ。ここに来た兵士たちは新兵ではなく、動きからしてそこそこの経験を積んだ兵士に見えた。 店には俺と盗賊だけになると店主と、その手下がニヤニヤしだした。彼らは俺を単なる子供と見下しているのがありありと分かる。その顔には、嘲笑と侮蔑の色が浮かんでいた。 (まあ……俺みたいな一人のガキが相手だとそうなるよな……) 俺は、彼らの反応を冷静に分析した。「逃してくれるなら金貨5枚やるぞ? いや、10枚だ! どうだ?」 店主は、いかにも悪党といった顔で、俺を値踏みするように言葉を投げかけてきた。その声には、俺を誘惑しようとする魂胆が見え隠れしていた。 金貨を10枚革製の巾着に金貨を入れて見せてカウンターに置いた。 金貨10枚か……ここなら1年以上くらい遊んで暮らせる金額だな。金貨5枚や3枚とかケチらない辺りが場慣れをしている気がした。初動でケチって兵士が集まってくれば買収する金額が跳ね上がってしまう。初期段階で金貨10枚で逃げられれば安いもんだもんな…&
「なんだ……驚いたぞ、護衛とか言うからよ。それに剣も持っていたが?」 店主は納得して安堵の表情をして、更に疑問に思った事を聞いてくる。警戒が解けたようだ。彼の顔には、疑問が晴れたような清々しさが浮かんでいた。「あれは父親が冒険者で、お金を借りる手続きをするのに剣が邪魔になるから預かっていただけだよ」 俺は、もっともらしい理由を付け加えた。「あぁ……なんだ、そうか……そういう事か」 店主は完全に信じ込んだ様子で頷いた。その顔には、疑念が完全に晴れたような表情が浮かんでいた。そろそろ馬車に着いた頃かな……俺は、内心でそう推測した。♢不正の指摘と兵士の介入 ミリアと兵士が馬車に辿り着いた頃を見計らって、俺は店主に話し掛けた。「えっと……おたくの店って悪質な金貸しですよね?」 俺がそう切り出すと、店主の顔から笑顔が消え、眉間にしわが寄る。その表情は、まるで仮面が剥がれ落ちたかのようだった。「は? なんだ……急に?」 子供のイタズラだと思っているのか、悪い事をしている認識がないのか、もう当たり前となっていて悪事をしているという感覚が麻痺しているのか、素の表情で意味が分からないという顔をしていた。まるで因縁をつけられたという顔をしていて演技だとしたらスゴイな役者になれるんじゃないか? 俺は、彼の表情をじっと観察した。「返済に関して何の説明も無いですし……」 俺は、核心を突く言葉を続けた。「説明だと?」 店主は "ムッとした顔" で聞き返してきた……知らない訳がないと思うけど……説明する義務がある事を知らないで通そうとしているのか? まあ……知らないにしても、忘れていたとしても、どちらにしても違法だ。彼の目には、わずかな動揺の色が浮かんでいた。
軍人さんに不安を抱きつつも任務内容を話した。「貴方の任務は、ミリアの護衛とお金を借りる振りをしてもらう事です。それと、金貸しの不正があった場合の証人ですね。字が読めない人への説明が無く、返済金の合計額を言わないで、借りたお金の本当の返済金額を返済期日を過ぎてから返済しろと言ってくるのも違法ですよね?」 俺が確認すると、軍のお偉いさんを見ると頷いていたので問題は無いようだ。彼の表情は、事態の深刻さを理解したように引き締まっている。「不正の取締だったのですか……」 お偉いさんは、合点がいったように呟いた。「そうですけど?」「でしたら不正があった時の為に、兵士を手配をしておきます」「よろしくお願いします」 俺は深く頭を下げた。兵士の準備も出来て3人で金貸しのある店の近くまで馬車でやってきた。馬車の中は、微かな緊張感とミリアの浮かれた空気が混じり合っている。ミリアは窓の外を眺め、楽しそうに鼻歌を歌っていた。「さ~て……ここからは歩きで向かうよ」 俺は馬車を降りて、2人に声をかけた。「はぁ~い」 ミリアは……なんというかデート気分なのか楽しそうで、足取りも軽やかだった。一方の兵士さんは緊張で一言も話さず、緊張しきっていた。その顔は、まるで堅い岩のようだ。額には、冷や汗が滲んでいた。「はい!」 兵士は相変わらず軍人らしい大きな声で返事をした。「喋り方に気を付けて下さいよ……演技がバレたら終わりですからね?」 俺は、再度釘を刺した。「はい……」 兵士の声はわずかに小さくなった。その声には、反省の色が滲んでいる。「ミリアの名前は?」 俺は、もう一度確認した。「はい……ミーアですよね?」「はい、あってます」 店に入ると、偉そうな店主が自ら対応をしてく